Vol.7
キリスト教式海洋散骨葬
クリスチャン共同墓地の運営を始めると、いろんな問合せを受けるようになる。その中で「海洋散骨はしないのですか。」と聞く人がおられた。その場では聞き流していたが、翌週違う方が「僕は墓地には興味が無いです。死んだら海に骨を撒いてもらいたい。」と言ってこられた。私はもし、もう一人の方が海洋散骨について問合せてきたら、真剣に考えようと心に決めた。
10年程前、会社の釣り好きの仲間が、「一緒に小型船舶操縦免許を取って太平洋を横断しよう。」と誘って来た。彼らは私が大学で電子通信を専攻してきたのと少し英語が出来るので、太平洋横断に私を必要としていたのである。私は太平洋横断には興味はなかったが、海は大好きなので一緒に1級免許の取得に行ったのであった。
話は戻るが、3人目の海洋散骨を問合せる人はすぐに現れた。「海洋散骨を検討しているのだが、キリスト教式でやってくれる会社があれば嬉しいのだけれど・・。」私の願いは福音宣教である。海洋散骨葬というある意味厳粛な場で福音が語れたら本望と考え、早速準備を始めた。
まずは法的問題である。墓理法において、焼骨の埋蔵は、墓地以外の区域に行ってはならないと規定してある。しかし1991年に管轄の厚生省は「墓理法は遺灰を海や山に撒く葬法は想定しておらず法の対象外である。」旨の見解を発表したことが分かった。また法務省も刑法190条について「葬送のための祭祀として節度を持って行われる限り遺骨遺棄罪に該当しない。」旨の見解を発表してあった。よって海洋散骨葬は法的問題のないことがわかった。
次に問題は遺骨の粉末化である。遺骨を骨壷から取り出しそのままの形状で撒く訳にはいかないので、粉末にしなくてはならない。これを自分でするにはどうしても抵抗があり出来なかったが、幸いそれを引き受けて下さる業者が見つかり、提携するに至った。その業者は遺骨を粉末化して、海洋散骨葬に参加する人数分の水溶性の袋に分けて入れてくれる。散骨は粉末状の遺骨をそのまま手に取って海に撒くと考えている人がいるが、そんなことをすると風でその粉は自分や隣の人にかかってしまう。水溶性の袋に入った粉末状の遺骨をそのまま海にそっと落とすだけですぐに溶けて、透き通った海水に白く拡がり、故人の遺骨は自然に返る。
伝道者の書12:7「ちりはもとあった地に帰り、霊はこれを下さった神に帰る。」
日本における海洋散骨葬のほとんどは遺骨に手を合わせ拝む仏教式である。しかし故人の霊魂は遺骨の中にはおらず、すでに神の御許に帰っている。私たちは創造主であられる神を礼拝しつつ、丁重に故人のこの世における霊魂の家であった体を自然に返すのである。海洋散骨を通して、主の御名があがめられますように。