Vol.14
仏壇
私の妻は、田舎の本家の一人娘であった。私が大学を出た年の秋に結婚した。結婚して2年も経たず、彼女の父親が8月に亡くなり、葬式と初盆がいっぺんにやってきた。東京育ちの私は、そこで色々な風習があることに驚かされた。当時の私は宗教に無知で、クリスチャンでもなかったので、親戚のアドバイスを伺いながら行動することになった。
まずびっくりしたことは、戒名の金額の高さである。親戚の勧める一番高位とされる院号は百数十万円した。私は大学を出てまだ入社2年目、そんな金額はとても払えなかった。何とか真ん中のランクの戒名で承諾して頂いたが、それでも80万円の戒名代のお布施を払うことになった。そして家の中で行われる葬儀、終わりなく続く法要後の会食、背丈ぐらいの長さはある精霊船の製作依頼に精霊流し、灯籠焼き、追善供養の打ち上げ花火と目まぐるしく過ぎた。また一年後には一周忌がやってくる。墓の掃除と、寺の住職といい関係を持つことを忠告された。
それから2年の月日が流れ、私はキリストにある救いを受けクリスチャンになった。妻の田舎に行ってまずしたことは、背丈ほどある大きな仏壇を処分させて頂いた。そして本家の墓を継がないことを妻と一緒に親戚に宣言し、父親の埋葬されている寺院に行って、遺骨の取り出しを願った。親戚が集まり抜魂式が執り行われたが、その時の住職が怒ったように声を張り上げて読経を上げたのが印象的であった。しかしそれに反比例するかのように、私たちの心は平安に満たされていった。「まるで自分の中で太い鎖が一本一本切られていく音が聞こえたようだった。」と妻は振り返っている。
1603年から1868年までの260年以上にわたり徳川幕府が日本を治めた江戸時代、その時に檀家制度や五人組制度がつくられ、民衆は監視されていた。全ての民は特定の寺の檀家となり、仏教徒になることが義務付けられた。またこの時代に人々が仏壇や位牌を祀り始め、仏教と先祖信仰が結びついた。
私たち日本人は、この負の遺産の影響を未だに受けている。仏壇や位牌を処分するのに抵抗のある人がおられるが、クリスチャンになり本当の神がわかると、仏壇や位牌の無意味さとともに、気付かぬうちに人がいかにそれらに縛られているのかを知るようになる。もしあなたがクリスチャンで家長であるならば、それらを取り除く決心をするように勧めたい。
イザヤ書44章9節「偶像を造る者はみな、むなしい。彼らの慕うものは何の役にも立たない。彼らの仕えるものは、見ることもできず、知ることもできない。彼らはただ恥を見るだけだ。」