Vol.12
改葬(前編)
朝、私の携帯に婦人から悲痛な声で電話がかかってきた。寺の住職の方に怒鳴られたという。私はその婦人から以前に改葬の相談を受けており、改葬手続きの説明をしていた。
改葬とは墓地に埋葬されている遺骨を別の墓地に移すことである。一般に改葬をする主な理由は、遠方に転居するなどで墓の管理が出来なくなり、自宅から行ける霊園に移すものである。
しかし、クリスチャン共同墓地「園の墓」に改葬を希望する方々の大半の理由は、次の二通りである。一つはクリスチャンになり、寺の仏教的な墓から、またその法事法要から解放されたいという理由である。クリスチャンになってから仏教の行事である法要を執り行うのは、手間やお金がかかるだけでなく、読経を聞き、焼香をすることは辛いものである。この法事法要に関しては後編でもう少し語りたいと思う。
クリスチャンで改葬を希望する方々のもう一つの理由は、お墓を管理する承継者が将来いなくなってしまうからという理由である。公営の霊園でも毎年の管理費用の支払いが必要で、承継者は必須である。「園の墓」では納骨した後、一切の管理費用などを頂かないで運用しているので、自分、または自分たちの承継者がいなくても安心である。この婦人のケースは前者の理由であろう。
尚法律で、遺骨を勝手に墓地から取り出すことや、勝手に埋葬することは出来ない。よって改葬するには役所の発行する「改葬許可証」が必要になる。このところ「園の墓」に改葬依頼を3件続けて頂いたので、参考までに簡単ではあるが、改葬手順を記してみる。
まず現在遺骨の納められている墓地のある市区町村の役所から改葬許可申請書を入手する。その申請書は役所によって異なるので、それに応じて記載し、現在の墓地の管理者から署名捺印をもらう。役所によっては移転先霊園の受入証明書が必要な場合もある。改葬許可申請書を役所に提出し、「改葬許可証」を取得する。
そして遺骨の取り出しは、霊園の管理事務所や寺に申し出、日時などを決める。寺では抜魂式(閉眼法要)などの供養が執り行われるが、キリスト教信者になったので不要ですと丁重に断ってもよいと思う。実際に遺骨の取り出しをするのは、霊園管理事務所の人か墓石業者の人である。
その後、その墓地をさら地にして返還する。これは大抵指定された墓石業者が行うことになるが、相見積りが可能なら、それをお勧めする。
そしていよいよ「改葬許可証」を持って移転先の墓地に納骨となる。移転先墓地の納骨する権利を取得し、納骨日を打合せる。「園の墓」への改葬の際は、ここからエクレシアサポートが行う。
さて、冒頭の婦人の話であるが、紙面の都合上、次回に触れたいと思う。