Vol.25
お墓を継ぐ?
当クリスチャン共同墓地「園の墓」の加入を希望されて、申込用紙を入手される方々は大勢おられるが、申し込みまでたどり着く人は多くない。どうも家族や親族の賛同がなかなか得られないようである。この働きをしていてつくづく思うのは、日本においてお墓に対する昔ながらの固執、特にお墓を継ぐという意識がいまだに根強く残っていることである。仕事が定年になったら田舎に帰るという方々がおられるが、大きな目的の一つはお墓を継ぐためである。中には現在の仕事を辞めてまで、そのために田舎に移住する人たちもいる。
お墓を継ぐ、先祖崇拝をするというのは、儒教の影響であろうか。元々仏教は、輪廻転生からの解脱を目指す、悟りを開くための教えである。それに対して儒教は、招魂再生の思想があり、子孫が先祖を祀る儀式を行えば魂は再生すると考えているため、彼らは祖先祭祀を最も大切な務めとしている。日本の仏教はその影響を受けているのだろうか。
他の宗教のお墓の概念についてはどうであろうか。
輪廻転生に基づいているヒンドゥー教は、死後の魂は他の人間や生類に転生すると考えているので、お墓は必要ない。そのため彼らは火葬した後、灰をガンジス川にそのまま流す。
イスラム教は、偶像礼拝や先祖崇拝を厳しく禁じているので、お墓参りは禁止である。最後の審判の日にその体は蘇ると信じているので火葬はせず、お墓は単にその時までの仮場所である。それは土を盛り、簡単にレンガや棒を置くだけの質素なものである。
神道は死をけがれと考えるので、神社で葬儀をすることはないし、境内にお墓を設けることもしない。
仏教でもチベットは、火葬にする樹木が少なく岩場や凍土の多い地域では埋葬出来ないので、鳥葬が行われる。遺体を鳥に食してもらい、共に天に舞い上がるというもので、お墓は要らない。
キリスト教国では、お墓は家族単位のものではなく、一般的に個人単位で埋葬される。広大なアメリカでは、夫婦の霊園も別々で州でさえ異なる場合も多い。
宗教や国の違いだけでなく、時代によっても風習は変わっていく。お墓に固執の強かった中国でも、近年は土地不足で墓地の高騰が問題となり、中国政府は揚子江や海への散骨を呼びかけ、奨励金も支給しているという。
日本の少子化の影響はお墓の継承者不在の問題となり、○○家之墓から、個人墓、夫婦墓、両家墓、また共同墓地や永代供養墓などに変わりつつある。
私たちは一時期の風習に束縛されて、お墓を誰が継ぐかで悩むのではなく、死後どこへ行くのかの方が重要である。
ヨハネ14章3節「わたしが行って、あなたがたに場所を備えたら、また来て、あなたがたをわたしのもとに迎えます。わたしのいる所に、あなたがたをもおらせるためです。」
神を信頼し、神に永遠の住まいを用意されている者は幸いである。