Vol.12
改葬(前編)
朝、私の携帯に婦人から悲痛な声で電話がかかってきた。寺の住職の方に怒鳴られたという。私はその婦人から以前に改葬の相談を受けており、改葬手続きの説明をしていた。 改葬とは墓地に埋葬されている遺骨を別の墓地に移すことである。一般に改葬をする主な理由は、遠方に転居するなどで墓の管理が出来なくなり、自宅から行ける霊園に移すものである。 しかし、クリスチャン共同墓地「園の墓」に改葬を希望する方々の大半の...[続きを読む]
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Vol.12
朝、私の携帯に婦人から悲痛な声で電話がかかってきた。寺の住職の方に怒鳴られたという。私はその婦人から以前に改葬の相談を受けており、改葬手続きの説明をしていた。 改葬とは墓地に埋葬されている遺骨を別の墓地に移すことである。一般に改葬をする主な理由は、遠方に転居するなどで墓の管理が出来なくなり、自宅から行ける霊園に移すものである。 しかし、クリスチャン共同墓地「園の墓」に改葬を希望する方々の大半の...[続きを読む]
Vol.11
海洋散骨葬の働きをしている私のもとに、次のような電話がかかってくる。「自分は葬儀を望まないので、散骨をしてほしい。」このような依頼は思いのほか多い。 まず理解して頂きたいのは、散骨は葬儀の代わりに行うものでなく、墓地に埋葬する代わりに行うものである。葬儀をするか、しないかは全く別の問題である。 葬儀を行わなくても、人が亡くなると医者から死亡診断書を書いてもらい、死亡届と火葬許可申請を役所に...[続きを読む]
Vol.10
朝8時に私の携帯電話が鳴った。今日これから行く予定の葉山マリーナからだった。「榊さんですか? 今日は波が高いので出航を中止にして頂けませんか。」確かに昨晩から少し風が強いなと思っていたが、空は快晴の海日和である。私はこの中止依頼の承諾を躊躇した。今日の海洋散骨を依頼して下さった方は広島の方で、昨日には移動して東京のご子息の家にすでに着いているはずである。今更中止しますとは言いにくい。私は「沖に出な...[続きを読む]
Vol.9
私のところに加入者の方々から、死後の世界や、裁きに関する質問のメールや手紙が時々届きます。何と多くのクリスチャンが、救いを取り去られることを心配し、また裁きを恐れていることだろうかと驚かされます。 人は一度救われたら、救いは取り去られることはありません。そしてクリスチャンは、死後罪を裁かれることはないのです。神であり、人として来られた主イエス・キリストが、私たちの罪の身代わりとなって十字架で...[続きを読む]
Vol.8
クリスチャン共同墓地「園の墓」の運営管理をしている私のところに、いろんな問い合わせや要望がやってくる。この前は土葬を希望された方がいらっしゃった。これで2件目である。「園の墓」では土葬はしませんと言うと、土葬の出来る墓地も造ってほしいとの要望であった。私は日本ではもう土葬は禁止されているものだと思っていたが、調べてみると、地域によっては許可されている所もあるようである。 火葬が当たり前になってい...[続きを読む]
Vol.7
クリスチャン共同墓地の運営を始めると、いろんな問合せを受けるようになる。その中で「海洋散骨はしないのですか。」と聞く人がおられた。その場では聞き流していたが、翌週違う方が「僕は墓地には興味が無いです。死んだら海に骨を撒いてもらいたい。」と言ってこられた。私はもし、もう一人の方が海洋散骨について問合せてきたら、真剣に考えようと心に決めた。 10年程前、会社の釣り好きの仲間が、「一緒に小型船舶操...[続きを読む]
Vol.6
斎場にはいくつもの仕切られたセレモニーホールが用意されており、各ホールから読経の声や木魚を打ち鳴らす音が響き渡っていた。そんな中、私が牧師服を着て歩いていると注目を集める。通常キリスト教式の葬儀は教会で執り行われるので、斎場で行われるのは珍しいのであろう。 私は花できれいに飾られた祭壇を見ながら、5年前の出来事を思い出していた。当時、私と一緒に働いていた60歳になる男性の奥さんが急に病で亡くなら...[続きを読む]
Vol.5
暑い夏の日であった。アメリカから日本人の婦人より一本の電話が入った。「クリスチャンであった弟が日本で亡くなったので納骨をお願いしたいのですが。」私は「園の墓」の紹介と納骨における諸手続きの説明をすると、婦人は即決されて、翌週日本に来られることとなった。婦人は成田空港に着いた翌朝私の所に出向いて来られ、申込書に記入をし、現金で支払いを済ませた。そしてその翌日には納骨式を執り行うことになった。何という...[続きを読む]
Vol.4
クリスチャンの婦人から納骨の依頼を受けた。よく話を聞いていると、息子さんは牧師である。私は「それでは司式を息子さんにして頂きましょう。」と提案すると、それは出来ないので私にしてほしいと言う。何が問題かその時は知る由もなかった。 後日私は牧師である息子さんと電話で話をした。とても感じのいい方で、しっかりした牧会をされておられると印象を持った。問題は彼の姉にあるようであった。キリスト教に猛反対をして...[続きを読む]
Vol.3
「園の墓」のある冨士霊園は、御殿場の山側にあるため天候が変わり易い。その納骨式の日、天気予報は曇りであったが、霊園のある山には真っ黒な雲が近づいていた。 亡くなられたご主人の納骨のために、クリスチャンである独身の息子さんに連れられて不安げな表情の婦人がやって来られた。彼女は未信者であるためキリスト教式の納骨式に不安なのだろうか。または近いうちに引っ越されると聞いていたので、その引っ越し先の不安だ...[続きを読む]
Vol.2
少し初夏を感じさせられる日、私は牧師服を手に抱え、霊園で2時間程待っただろうか。私が早めに着いたせいもあるが、遺族の方々は交通渋滞で1時間以上も遅れて着いた。腰を上げ彼らに近づき挨拶をしたが、冷やかな反応であった。冷たい空気が張りつめた中、10数人の遺族の前で納骨式を開始しなければならなかった。 このクリスチャン共同墓地「園の墓」に申し込まれた婦人は、故人の娘さんでクリスチャンであった。電話で納...[続きを読む]
Vol.1
2011年5月、私は中川健一牧師夫妻を成田空港へ送るのに高速道路を運転していた。車内でクリスチャン共同墓地を造ろうという話でとても盛り上がり、成田インターチェンジを通り過ぎてしまった程であった。 今から十数年前、私が大阪から神奈川に引っ越した際、なかなか転入に至る教会が定まらなかった。私の場合、所属教会がないという不安は、信仰を失う恐れの不安ではない。自分が天に召された時の葬儀の司式者と墓地...[続きを読む]